「○○食堂分店」など、「分店」を名乗るお店がある。
「分店」という響きには、どこか情緒が漂うような。
「分店」を巡って、分店らしさを味わってみたい。
「分店」とは何か
デジタル大辞泉で「分店」を調べると、
「本店から分かれて独立した店」
と出てくる。
「分店」と付くお店にそんなには行ったことはないが、幼き頃の「ない記憶」が呼び起こされるかのごとく懐かしい響き。
暖簾分け、丁稚奉公…
関連ワードがさらに郷愁を引き立てる。
行きたい、「○○食堂分店」と付くお店に。
そして味わいたい、分店らしさを。
「分店」を味わうには「本店」から
まず目を付けたのは、新潟県長岡市にある「福助分店」。
「分店」という響きは言わずもがな、店名の「福助」というのも味わいがある。
「福助×分店」の相乗効果で、ものすごい情緒が期待できる。
しかし、「分店」の「分店らしさ」を味わうには、まずは「本店」を攻略してからだろうと、そう思った。
「キューブ」を観ないまま「キューブ2」に手を出すようなものではないか。
というわけで、同じ新潟県長岡市にある、本店とおぼしき「福助食堂」を訪れてみる。
「本店」を名乗っているわけではないが、のちに「福助分店」で聞いたところによれば、こちらが本店で間違いないようだ。
↑こちらが本店「福助食堂」。本店の情緒もすごい。

店内はテーブルが5卓ほどと小上がりの「ザ・食堂」。
壁に貼られたメニューはどれもそそられるものばかり。
麺類が押しのようだが、丼ものも捨てがたい。
そんななかで特に目を引いた「中カ半カレ 800円」の文字。
中華そばとカレーのセットということだろうか。
こういう味のある食堂である食堂の中華そばとカレーなんて、想像するだけで卒倒しそう。

↑素晴らしすぎる
このブログエントリは、書き出しに書いたように「分店」の分店らしさを味わうことがテーマである。
であるがゆえ、「本店」を訪れたのは「分店」との比較を行うことが趣旨であり、「本店」の詳細な食レポは本来は不要なのだが、この「中カ半カレ」があまりに素晴らしかったので書き記したい。
忙しい人は読み飛ばそう。

中華そばは見ての通りのオールドスタイルだが、淡麗ではなくしっかりとしたしょっぱさ。
故にスープの完飲は難しそうと思ったのだが、どうにもレンゲが止まらずに、そう、止めるのが惜しくて、結局は飲み干してしまった。
見た目に引っ張られて「昔懐かしい味」などという、ぼかした表現をつい使いそうになるけれど、ドストレートにしっかりと美味しいと声高に叫びたい。
俺、こういうラーメンが一番好きだ。

カレーも、なんでこうも美味しいのとため息が出るほど。
今日日 進化している家庭のカレーともまたちがう黄色いルーのカレーは、また絶対食べたい味。
ルーが足りなくなる感じもまた良き。
以上、「本店」福助食堂のレポートでした。
「福助分店」の「分店らしさ」
「本店」福助食堂での興奮も冷めやらぬ中、次の日「福助分店」を訪れた。
店前にかかるのは「福助食堂」の暖簾。
本店のほうの「福助食堂」にかかっていたものと同じ図柄だ。
↑本店の暖簾
分店らしさ①暖簾が本店のデザインと同じ
お昼時に訪れたこともあり、次から次へとお客さんがやってくる。
おまけに出前の電話までかかってきて、ご主人と女将さんが二人で切り盛りするお店は戦場のよう。
一人客の私はカウンターに座る。
本店との比較には、同じメニューを注文するのがセオリー。
前日の「本店」で注文したメニューにならい、ラーメンとカレーをオーダーした。
しかし、本店はセットメニューになっていたのに対し、分店のほうはセットメニューでの「ラーメン+カレー」はなく、それぞれ単品の注文となった。
王道メニューの単品2品の注文という、稀代の食いしん坊オーダーの完成である。
分店らしさ②メニューは本店とは異なる
しばし待っていると、ラーメンとカレーライスが着丼。
ラーメンの見た目のオールドスクールな感じは本店とも共通している。
レンゲでスープを一口。
おお、あっさりしてそうでしっかりとしょっぱい感じは似ているかも。
チャーシューの嚙み応えのある感じも。

カレーライスの方向性は全然ちがう。
こちらは今日日の家庭のカレーライスの感じだ。
こちらもうまい。
単品2品というわんぱくな注文でもペロリだった。
分店らしさ③味も異なる(でも似ているところもある)
相変わらずお店にはひっきりなしにお客さんが訪れるほか、出前の電話も次から次へと。本店との関係性も聞きたかったのだが、お店の方のじゃまをしないよう、本店よりも忙しそうな「分店」をそっと後にした。
生で初めて聞く「丁稚奉公」
すっかり分店づいた私。そんな折に新潟市秋葉区に「松月分店」というお菓子屋さんがあることを知った。
しかし、調べてみても「松月」「松月本店」なるお菓子屋さんはヒットしない。
これはどういうことなのだろうか、とさっそく訪れた。


店内は「古き良き」というおなじみのフレーズをつい口に出したくなる光景。
こういうお店のお菓子に心から惹かれるようになったこと、大人になったなと思う。
おすすめのプラリネと一口サイズのワッフルを購めがてら、お店のおかあさん(こういう呼称は今日的にどうかと思いつつ使います)に聞いてみた。

↑特製わっふる
「こちらのお店、『分店』とありますが本店もあるのでしょうか?」
と向ければ、かつては新津第二小学校の前に本店があったが、だいぶ前になくなってしまい、現在は分店だけが残っているとのこと。
こちらの分店は、分店のご主人がかつて本店で丁稚奉公していたことによる暖簾分けだという。
「丁稚奉公」って言葉、人から生で聞くのは初めてかも、と妙な感動。
分店らしさ④「丁稚奉公」という言葉を生で聞ける
分店らしさ⑤「分店」だけ残ることもある

↑プラリネも美味しかった
「焼肉定食」に見る本店/分店
最後に訪れるのは、新潟県長岡市にある「石田屋」と「石田屋分店」である。

↑こちらが「本店」石田屋

↑こちらが「石田屋分店」
今回は「焼肉定食」で本店と分店のちがいを引き出してみる。

↑こちらが本店の焼肉定食

本店のそれは「焼肉定食」と聞いて想像する漢字よりも甘すぎず、かといって塩辛すぎず。汁気が多すぎないのが個人的にすごく好み。バランスのとれた焼肉である。
↑こちらは石田屋分店の焼肉定食
ここまで来れば、同じメニューでも本店と分店で違いがあることにいちいち驚きはしない。付け合わせは、本店が胡麻和えなのに対して、分店のほうは「じゃが芋の炒め煮」的な、初めて食べるやつ。

肝心な焼肉のほうは、味の方向性は本店と近い気がする。
ただ、分店のほうがやや塩味が強くて「ガツンと感」が感じられる。
甲乙つけがたい。
つける気もないのだけれど。


↑「お好み焼き風焼きそば」「ごったら煮込みうどん」「おにぎり定食」… 興味がそそられるメニューばかり
食べ終わると、お皿に「石田屋分店」の文字が書かれているのに気づく。
そういえば、「福助分店」のお皿にも店名が記されていたような。
歴史が刻まれているようで、すごく素敵だ。
分店らしさ⑥お皿に「分店」の文字
分店に歴史あり。
最後にこちらのお店を
店内に入ることは叶わなかったが、ゼブラボールペンの看板を掲げる「分店」も見つけた。


食堂ではないけれど、文房具屋の分店というのも気になる。
次はどんな「分店」に出会えるだろう。