スピッツのインディーズ時代の楽曲に「353号線のうた」というのがある。
そして私の住む新潟県には「国道353号線」が通っている。
ひょっとして「353号線のうた」のモチーフは国道353号線なのだろうか。
「353号線のうた」を聴きながら国道353号線を走ってみた。
スピッツの隠れた名曲?「353号線のうた」
スピッツがインディーズ時代にリリースしたアルバム「ヒバリのこころ」に収録されている「353号線のうた」。
スピッツのファンの妻から、とあるライブに参加した折に「353号線のうた」という曲をワンフレーズだけやったという話を聞かされ、
(へー、新潟県内を通る国道353号線をフィーチャーした曲があるなんて…)
と知った。
その後、2021年発売のアルバム「花鳥風月+」にも収録されたようである。
聞いてみれば、Bメロでボーカルにエフェクトがかかる部分がクセになるし、女性も入る掛け合いのコーラスの賑やかな感じなど、ファンでなくとも聞きどころの多い曲である。
アウトロで同じフレーズを繰り返しつつ、お遊びのような掛け声が入って、ビートルズの「All You Need Is Love」のよう。
しかし陽気な曲調とは裏腹に、歌詞は暗い。
そして国道353号線がモチーフであることを示すような具体的な地名はおろか、「国道」というワードも出てこず、つかみどころがない。
「353号線のうた」は国道353号線がモチーフなのだろうか。
国道353号線とは
国道353号線は群馬県桐生市と新潟県柏崎市を結ぶ国道である。
しかし途中 群馬県と新潟県の県境をまたいだ不通区間があり、起点から終点までストレートに行くことはできないようだ。
新潟県内では湯沢町が不通区間の端となっているが、そちらは国道17号線と国道353号線の重複区間となっている。
今回は新潟県南魚沼市の国道353号線入口交差点から柏崎市の終点までを辿ることとしたい。

↑黄色のルートをたどります
曇天の中スタート
午後1時。
新潟県南魚沼市はその名も「国道353号線入口交差点」よりスタート。


↑ちゃんと書いてある
ここからは終点にたどり着くまでカーステレオで「353号線のうた」をひたすらエンドレスで聴き続けることとする。
いくらいい歌でも、そう何度も聴けば気が狂いそうになるだろうか。

↑それでは行ってきます
”空き缶さえ見つからない”辺鄙なところのように歌われるが…
スタートするとすぐに、スキー場周辺のペンションが立ち並ぶエリアを通過。こういう場所って妙なうら寂しさがあって、それがむしろ風情があってすごく好きだ。


その後は山道に突入。
「353号線のうた」はこのような歌詞から始まる。
実際はどうだろう。
地獄の入り口が待っているのか。

山道ではあるが「酷道」と表現するほど険しくはない感じ。
だが歌の主人公たちは相当 辺鄙なところを往っているようで、歌詞はこう続く。


商店や自販機もないような場所を走っているようなのだ。
缶ジュースありました!!
よほど車通りの少ない険しい道だったら歌詞になぞらえて「国道353号線に落ちている空き缶探し」でもやろうかと思っていたのだが、まんまと自販機がありましたわ。
これが「353号線のうた」のリアル。
突然の行き止まり
歌詞から連想するによほど険しい道かと思っていたが、存外 順調に走り進め、十日町市にて国道117号線を通過。
スタートからここまで50分。
エンドレスで流している「353号線のうた」は10回程度聞いただろうか。
まだイヤになっていない。
そこから柏崎市に向かおうとしていたそのとき。


「全面通行止」の看板が行く手を阻む。
どうやら国道353号線の一部区間において冬季間は通行止めになるようだ。
といっても、もう5月なのだが…
あとでgoogleストリートビューで調べたところ、その区間だけ部分通行止めになるだけあり、結構ハードな感じ。
ハードなほうが「353号線のうた」の世界観に近いと思えば、この区間を通れなかったのは残念だ。
「353号線のうた」が全然覚えられない
通行止めは一部区間なので、一度国道117号線と県道49号線を経由し、無事に再度 国道353号線を辿ることができた。

↑県道49号線を右折し再度 国道353号線へ合流
↑途中(少し国道353号線から逸れるが)「道の駅まつだいふるさと会館」で休憩
↑道の駅で名物の「あんぼ」を購入。どうやら長野県で有名な「おやき」の皮が米粉バージョンの郷土食らしい。

ここまでスタートから約100分。
20回以上エンドレスで「353号線のうた」を聴いている。
出だしの歌詞は多少口ずさめるようになったが、不思議なことにその後の歌詞が一向に覚えられない。
メロディに対するワードの置き方が、なんとなく難しいのだ。

↑特にこの部分、単語とメロディの音数が一致していなくて気持ち悪い
しかしそれは反面この曲の力を示しているようで、覚えられない=まったく飽きがこない。
というか、抜群のBGMとなっている。
そして長めの間奏、ギターソロが最高に気持ちいい。

↑余談だが1月にスピッツの展示に行きました
ラストは「海の見える街」へ
「353号線のうた」はこう終わる。
ここまで辿ってきた国道353号線。
終点は「海のまち」新潟県柏崎市である。
国道353号線の起点である群馬県桐生市しかり、この日のスタートとした新潟県南魚沼市、そして経由してきた十日町市、いずれも海のない土地であった。
そう思うと、「353号線のうた」の歌詞とリンクしているように思える。

↑柏崎市まではまだ少し
対向車とすれ違う時は一旦止まって通過を待っていたが、みなすれ違いざまに合図を送ってくれてナイスコミュニケーション。

↑ついに国道353号線の終点がある柏崎市に入った

↑走りやすい道になってきた!ゴールはもうすぐ

↑到着!
この交差点が国道353号線のゴール。
出発から2時間40分、カーステレオでひたすたリピートで流した「353号線のうた」は約35回。
これだけ聞いても飽きの来ない「353号線のうた」、やはりすごい。
せっかくなので歌詞にある「海」へ行ってみる。
出発時は曇天だった空も、すっかり晴れた。
それはまるでこの歌詞のストーリーをなぞっているように思えた。

息苦しいほどの暗い道を抜け、開けた場所へ。
先行きの見えない将来への不安を抱えながらも、自分のペースで走っていく決意。
「スピッツの曲だからそんなに安直なメッセージじゃないでしょ?」
と思うなかれ。
これが実際に国道353号線を走りながら30回以上リピートで「353号線のうた」を聴いた私の感想なのだ。
結局「353号線のうた」が国道353号線のことを歌っているのか、本当のことはわからない。
だけど、私はこの曲を聴くたび、あの日あの山道を走った光景を思い出すことだろう。

↑国道353号線のロードサイドには「食堂353」なるものが。現在はどうやら閉業しているようだが、在りし日はスピッツファンが訪れていたりしたのだろうか。