後続にはよく見かける車種のコンパクトカー。
乗っているのは互いに20代前半であろうか男女の姿。
夫婦か、カップルか、はたまたそれ以前か。
ふとあの日のドライブを思い出す。
赤信号で停まるや急に助手席のドアを開け降車した女は、沿道の商店街の青果店へ駆け出す。
歩行者用信号が点滅したタイミングで早足で戻ってきた手には、赤いネットに入ったみかん。
食べる?とみかんを僕の口に放ってくれた。
みかんを剥くには似合わない、きれいな長い爪。
白い筋が付いたそれがなんだか僕をゾクゾクさせた。
あのみかんの酸っぱさを覚えている。
バックミラーに映るのは、押し黙ったように見える二人。
もはや沈黙が気にならない間柄なのか、会話の糸口を探っているのか。
関係性を読みあぐねる。
あの日、残りのみかんはどうしたんだっけ。
視線を前方に戻し、右足を右のペダルに踏み換え、加速していく。
口に放られたみかんの生あたたかさがよみがえった。

