声 |
手が、足が動かない。
実家のリビングで昼寝をしていた日、はじめて金縛りに襲われた。
息ができない。
苦しい。
声が出ない。
父や母の存在を近くに感じながら、助けての声が届かない。
肩を叩いてくれたならこの苦しさから解放されるだろうに…
死ぬ。
必死の思いで目を覚ますと、Tシャツはじっとりと濡れていた。
リビングのテレビではドキュメンタリーが流れている。
少女の殺人と死体遺棄を巡る冤罪。
はじめは犯行を否定していた容疑者とされた男は、自白を強要された末に容疑を認める犯行を供述をはじめる。
自分の声が届かないということ。
その息苦しさ。
この世にはどれだけの響きとならない声が漂っているのだろう。