その日もいつものようにサクッと引き取って帰りたかったのだが、前には大量の荷物を出しているお客さんが。
お店にいる店員さんは一人きりだ。
少し待てば終わるだろうと店のガラス戸の前で音楽を聴きながら待っていたが、一向に終わらない。
一曲丸々聴き終わりあきらめて帰ろうかと思ったが、ここで帰ってはなぜか格好悪い気がして帰れない。
やがて別のお客さんがやってきて、こちらの気も知らず私を追い越しズケズケと店へ入ったが、大量の荷物を出すお客さんを見て帰ってしまった。
音楽プレーヤーから流れる曲は三曲目に突入していた。
さすがにもうあきらめて帰ろうかと思ったが、そこで帰ってしまえば店員さんを申し訳ない気持ちにさせてしまうと思い、帰れない。
その後に予定があることで気持ちが急いて、足が貧乏揺すりを刻む。
四曲目に入ったとき、大量の荷物を出していた前のお客さんがようやく私の存在を認識した。
五曲目、六曲目…
ついに前のお客さんの用事が終わり、店から出てきた。
すれ違いざまに
「すみません」
と言ったので、私は「いえいえ」と応えた。
店に入り、Yシャツを受け取った。
店員さんが
「すみませんでした」
と言うので、私は
「いえいえ」
と応えた。
帰りながら考えた。
誰が悪かったのだろうと。
当然の権利を行使したにすぎない前のお客さんか、何をミスをしたわけでもない店員さんか、普段ならまったく問題のない一人体制というシフトを敷いたお店か。
はたまた前のお客さんと店員さんを申し訳ない気持ちにさせてしまった私が悪いのか。
きっと、誰も悪くない。
むしろ、何も起きていない。
どこかに目くじらを立てて何かが起きたと誰かを責めることはできるけれど、今日のところはきっと何も起きていない。
何も起きていない夕暮れ、角のない白い月が綺麗に見えていた。
スラックスもクリーニングに出さなくちゃと思い出した。

