ジャスコとは何か |
二階より上はガランとしており、まるで死んでいるかのような状況。
これが私たちの夢を育んだジャスコなのか。
かつてジャスコは私たちの生活のすべてだった。
近年はジャスコブランドは無くなりすべて「イオン」へと名を変えたようだが、私が今もジャスコと呼ぶのはそれだけ思い入れが強かったから。
最近は従来より大型で映画館やムラサキスポーツなどのテナントが入る複合型の店舗も広まりつつあるが、あれは「イオン」以外の何物でもなく、ジャスコの範疇を越えるものである。
中心市街地ではなく郊外に立つジャスコ。
その施設に夢を見たのは私だけではなく、「すべての道はジャスコに通ず」と言われたほど隆盛を誇っていた。
休日になれば周辺では「ジャスコ渋滞」が起き、駐車スペースを求め立体駐車場をどんどん上へと上っていく「ジャスコ登山」といった言葉も生まれた。
他の中学のやつになめられてはいけないと悪ぶることを覚えたゲーセン。
高校の合格発表を見届けたその足で向かったテナントの服屋さん。
多様な価値観を示しながらも、選択肢は多過ぎないほうがいいと教えてくれたフードコート。
あれほど輝きを放っていたジャスコが衰えて見えるのは時代の流れのせいなのか、私が大人になってしまったからなのか。
果てしない欲望の下に多くを求めるのが人間の性。
それを否定することはできないが、あの頃の私たちはそれで十分に幸せだった。
多くのテナントが軒を連ねる郊外型の大型ショッピングセンターも珍しくない昨今。
人混みに歩き疲れた足を見つめ直し、今一度踵を付けて生きる。
ジャスコは昔も今も、私たちに優しく諭してくれる。